寿合宿日記!!

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2010年 12月 08日

7日(火)、中目黒

ども竹村です。
東京に移動して旅の最終日は、ギャラリーをめぐりました。日比谷でカオスラウンジを観て、中目黒でミヅマアクションに行き、最後に青山のビリケンギャラリーでクリスマスソングス展というのを観ました。ここでは合宿参加者の幸田さんの作品について感想を。中目黒のミヅマでやっていた「眼差しと好奇心 vol.6」というグループ展です。


幸田千依さんの展示

入ってまず、正面に巨大な絵があって、様々な人がたくさん泳ぎ合っていました。へーすげーこれいったいだれの作品だ、と思ったらそれが幸田さんの作品でした。正直びびりました。圧倒的でした。失礼を承知であえて言うと、幸田さんってこんなにすごい絵を描く人だったのか!と驚きました。というのも、寿で観た作品と比べると、色彩の多様さ、そして光の反射する波や、肌の表面を構成する面の数がともに圧倒的な厚みをもって迫ってきたからでした。きっと時間をかけて少しずつ描いていくことで本領を発揮するタイプの人なのだろうなと思いました(本人も、だから乾くのが速いアクリルよりも油絵が向いているとおっしゃっていました)。

寿での作品は(ギャラリー入り口の一点を除いて)おそらく時間が限られた中で悩みながら製作されたもので、本人も完成度には不満があるようでした。ただ、それはそれで、悩んだ時間が筆の不在として、あるいは精度と引き換えに得られた軽やかさとして作品に現われているならば、芸術行為としてトータルに見た時には同じ重さを持ってくるのではないか、とも感じました。

さてこの大きな絵、「代々木・相関図・インターネット」と題されており、たくさんのキャンバスが繋ぎ合わされてひとつの巨大なプールを形成しています。まずすごいなと思ったのは、色彩の淡い豊かさです。泳ぐひとや波の光が様々な色となって水に溶け合っています。幸田さんの作品で特徴的なのは、水面の多様な表情を描いている点で、ある作品では雲が映っていたり、ある作品では夜の闇と月の光が映っていたりするのですが、水中に身を入れた人間のまわりに生まれる波紋を丁寧に描いていることがとりわけ印象的でした。その波紋は人のまわりを円になって広がり、風がなければ形をつくることのない水面にメッセージを生んでいるかのようです。時おり立ち上がる飛沫(しぶき)も印象的でした。

この巨大な作品を観て感じたことは、ひとはある場所では無関心によって接近し、関心によってむしろ遠のくということです。というのは、左端に溺れたらしき人があり、その周りを人が距離をとって取り巻いている絵があったからです。プールの全体において人は隣り合っているのに、知らぬ者同士は特に向き合う様子もありません。考えてみれば満員電車や混雑したプールというのは、ある意味で隣にいる人間に関心がないからこそ接近していられるとも言えます。逆に関心を持った相手と対する場合にはそれなりの間合いというのが生まれてきます。ここでも、寿ではこれと逆ではないにしろ、違った関係の形があったなと思い出しました。そこでは関心を持った者同士が接近し触れ合い、関心のない者同志は互いに一定の距離を取っていたのでした。寿を生きるための、ひとつの尊厳ある態度なのかもしれません。

過去の作品を観ると、幸田さんが一貫して水面を描いてこられたことがわかりますが、とりわけ印象に残ったのは水中を描いた「水面下では」という作品です。水中のぼやけた具合や差し込む光、そして下から見上げた時の水面をうまく描いており、なによりこれが学校の黒板にはめこまれていたのが面白かったです(幸田さんのホームページで写真を見れます)。

「寿うずまき」という名前が提案されたとき、ひとり幸田さんが激しく反応したという逸話を聞いていたのですが、一連の作品を観てその理由がわかりました。ある意味でうずまきは、幸田さんの絵の中心的なモチーフのひとつだったわけです。作品ファイルを観ると「代々木・相関図・インターネット」は少しずつ書き足してきたものであることがわかりますが、横に広がっていくそれは、まさにインターネットのようでもあり、寿で繋がっている絵を配るという発想も、作家活動の継続の中から生まれてきたのだなとわかりました。


点在する個々の作品/行為がたとえ目に見える形で報われなかったとしても、投げられたものは必ずなんらかの波紋をつくる、結果ではなく投げること、あるいは投げるに至る過程そのものが大事なんだと、幸田さんの今回の作品から教えられたように思います。

おそらくこれは柏にいっしょに行った魚くんも感じたと思いますが、展示会場で力強い作品を前にすると、「絵描ける人(作品つくれる人)ってずるいな~」って思います。くやしいね。



夜は友人に誘ってもらい新宿のゴールデン街に行ったのですが、なんとその店で働いていたのが、柏のislandで展示していた久恒亜由美さんだったことも、この旅の驚きのひとつでした。あらためて作家同士のネットワークと、代々木インターネット的な繋がりの奇跡に、感謝したいと思います。

とても短い間でしたが今回の合宿はとても楽しかったです。
事務局の橋本さんはじめ、みなさん本当にありがとうございました。
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by kotobukitogether | 2010-12-08 20:38 | 第1回秋(2010)


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